メダカのアレスチン

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メダカ網膜に発現するアレスチン

 アレスチンには、脊椎動物の光受容系 (視覚アレスチン) と神経伝達物質の受容系 (βアレスチン)で働いているタイプの他、節足動物の感覚受容系(無脊椎動物アレスチン)で働いているものがある。
 Craft & Whitmore (1995) は、ヒトとアフリカツメガエルの錐体アレスチンを用いた解析から、錐体アレスチンは桿体アレスチンとは独立に生じたと主張した。我々は、そのことを確かめるためには、魚類のアレスチンなどさらに多くのデータが必要であると考え、メダカの視覚アレスチンを調べることにした。メダカ網膜cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、3種のアレスチンcDNA(メダカ-R1, メダカ-R2, メダカ-C)を見いだした。それらのデータを加えてアレスチンの系統関係を詳細に解析した結果、全ての視覚アレスチンは単一のクラスターを形成することを明らかにした。このことは、(1)まずβアレスチンと祖先型の視覚アレスチンが分岐し、(2)その祖先型の視覚アレスチンから桿体と錐体のアレスチンが生じたことを意味している。(2)の遺伝子重複とほぼ同時期にβアレスチンもβアレスチン-1と-2の遺伝子重複を起こしていることは、注目に値する(ゲノム重複のような大規模な遺伝子重複が生じた場合に同様な結果になると予想される)。  in situ ハイブリダイゼーションにより、これらメダカアレスチンのうち、R1とR2の2種は桿体に、Cは錐体に発現していることが明らかになった。それぞれのアレスチンに対する抗血清を作製したところ、明暗それぞれの順応条件下で、anti-R1とanti-R2抗血清の認識する視細胞内の部域が違っていることから、メダカ桿体に存在しているこれら2種のアレスチンが異なる機能を持つ可能性が考えられた。


参考文献 :

・Hisatomi et al. (1997) Arrestins expressed in killifish photoreceptor cells. FEBS Lett. 411(1), 12-18. (PubMed)
・Imanishi et al. (1999) Two types of arrestins expressed in medaka rod photoreceptors. FEBS Lett. 462(1-2), 31-36. (PubMed)


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