脊椎動物の視覚と視細胞


視細胞

 我々は外界の情報の80%以上を視覚により得ているとも言われています。視覚は、最もよく研究されている感覚の一つで、分子レベルでの理解も進んでいます。
 視覚において、まず、光は網膜に存在している視細胞の外節と呼ばれる部分で受容されます。脊椎動物には桿体と錐体という2種類の視細胞が存在しています。桿体は、薄暗いところ(月明かり程度の)でものを見る(薄明視)ときに働くのに対し、錐体は明るいところでものを見る(昼間視)ときに使われます。錐体は、色を弁別する(色覚)役割も持っています。これら生理機能の違いを反映して、通常、桿体は大きな外節を持ち、単一の光子も感知できるほど感度が高くなっています。これに対し、錐体の外節は小さく感度は低いかわりに、応答速度が速いという性質があります。この感度の違う2種類の視細胞を使うことにより、私たちは薄暗い場所でも明るい場所でも、ものを見ることができます。


視細胞の多様性


 錐体はさらに、色(光の波長)感受性の異なるいくつかのタイプに分類されます。これらの錐体視細胞を用いて色が弁別されるわけです。左の図は、ヒトの視細胞の波長感受性(上側)と代表的な脊椎動物の視細胞の吸収極大波長(感受性が最も高い波長、下図)を模式的に示したものです。脊椎動物の視細胞の吸収極大波長が幅広い領域に分布していることが分かります。この視細胞の波長感受性の分布は、それぞれの動物の色覚に重要な意味を持っています。

 このように、感度や波長感受性が異なる視細胞が存在することは、私たち脊椎動物にとって、大変重要なことなのです。
 でも、どのようにして、それぞれ性質の異なる多様な視細胞が生まれてくるのでしょうか? 我々は、光情報が伝達される分子メカニズム(普遍性)を調べるとともに、それぞれの視細胞が多様化する機構を分子レベルで調べました。



さらに詳しく知りたい方に

1.視物質
2.光情報伝達システム


参考文献 :
  • Hisatomi, O. and Tokunaga, F. (2002) Molecular evolution of proteins involved in vertebrate phototransduction. Comp. Biochem. Physiol. 133B, 509-522. [PubMed]
  • 久冨修、徳永史生 (2002) 視細胞分化における視物質の転写調節、Molecular Medicine、39別冊(網膜・視神経の発生と再生、福田淳編集)pp19-27. [abstract]
  • 久冨修、徳永史生 (2000) 魚類の視物質の分子進化、蛋白質核酸酵素別冊、45(17), 2924-2930. [abstract]
  • 久冨修、徳永史生 (1998) 光受容系の分子進化、生物物理、38(1), 4-8. [abstract]



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