脊椎動物のオプシン


オプシンの基本的な構造

 光受容体である視物質は、発色団とオプシンと呼ばれるタンパク質部分からなるタンパク質複合体です。脊椎動物は、11シス型のレチナール(レチナール1)もしくは二重結合の一つ多い3デヒドロレチナール(レチナール2)を発色団として持っています。レチナール2を発色団として持つ場合、視物質の吸収極大波長は最大で50nm程、長波長側に移動します。しかし、レチナール1のみを発色団として考えたとしても、脊椎動物の視物質の吸収極大波長は、350nm〜570nmの幅広い領域に分布しています。
 発色団の違い以外に、視物質の吸収極大波長を変化させる原因として、オプシンのアミノ酸配列の違いが挙げられます。脊椎動物のオプシンは約350のアミノ酸から構成されています。左の図において、一つ一つの丸は一つのアミノ酸を示しており、中に書かれているアルファベットはアミノ酸の種類を示しています。


オプシンの系統関係

 現在までに、100を越える脊椎動物オプシンの一次構造が解析されました。それら、代表的な動物のオプシンのアミノ酸配列間の類似度を解析したものが分子系統樹(左側)です。図からも明らかなように、オプシンに5種の基本的なサブファミリーが存在していることが分かります。これらが11シス型のレチナール1と結合したときの吸収極大波長を右に示しました。このように、オプシンのサブファミリーと吸収極大波長には密接な関係があります。
 基本的に、一つの視細胞には1種類のオプシンしか発現していません。このことは、(1)オプシンサブファミリーの存在とその発現調節が、それぞれの視細胞の波長感受性を多様化させていることを示唆しています。



色覚の進化

 オプシンの系統関係を解析した結果を脊椎動物の各動物綱に対して整理したものが左図です。脊椎動物はその進化の過程で色覚を動的に進化させてきたことが示唆されました。



さらに詳しく知りたい方へ

視物質(詳細)
  • メダカの視物質(硬骨魚類)
  • カエルの視物質(両生類)
  • イモリの視物質(両生類)
  • ヤモリの視物質(は虫類)

    脊椎動物の光受容システムの概要
  • 視覚と視細胞
  • 光情報伝達カスケード

    参考文献 :

  • Hisatomi, O. and Tokunaga, F. (2002) Molecular evolution of proteins involved in vertebrate phototransduction. Comp. Biochem. Physiol. 133B, 509-522. [PubMed]
  • 久冨修、徳永史生 (2002) 視細胞分化における視物質の転写調節、Molecular Medicine、39別冊(網膜・視神経の発生と再生、福田淳編集)pp19-27. [abstract]
  • 久冨修、徳永史生 (2000) 魚類の視物質の分子進化、蛋白質核酸酵素別冊、45(17), 2924-2930. [abstract]
  • 久冨修、徳永史生 (1998) 光受容系の分子進化、生物物理、38(1), 4-8. [abstract]
  • Hisatomi et al. (1994) Phylogenetic relationships among vertebrate visual pigments. Vision Res. 34(23), 3097-3102. (PubMed)


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