ヤモリの光情報伝達システム


ヤモリの光受容器


 爬虫類であるトカゲは、錐体のみからなる網膜を持つ。その一部が夜行性のトカゲとなり、さらにそこからヤモリが分岐したと考えられている。そのため、ほとんどのヤモリは夜行性であるが、中にはPhelsumaのように再び昼行性になった種も存在している。これらトカゲ亜目では、それぞれの習性に対応するような視細胞の形態の違いが知られている。
 Kojimaらによって、夜行性のヤモリの桿体様視細胞には、錐体タイプのオプシンが発現していることが明らかにされた。これによって、夜行性ヤモリの桿体様視細胞が錐体から形態変化(transmutation)したものであることが分子レベルでも示唆されたことになる。次の疑問は、昼行性ヤモリの錐体視細胞は、夜行性ヤモリの桿体様視細胞が再度形態変化(reverse-transmutation)したものなのであろうか? また、その際に分子レベルでどのような変化が生じているのであろうか? これらを明らかにするために、昼行性ヤモリ(Phelsuma madagascariensis longinsulae) の視物質を調べることにした。


昼光性ヤモリの視物質





 昼行性ヤモリの網膜cDNAを検索した結果、4種類のオプシン類似遺伝子(DG-1, -2, -3, -4 と名付けた)を見いだした。それらを解析した結果、ヤモリの昼行性化に伴う変化として、以下のことが考えられた。
 ・視細胞の形態変化(再錐体化、reverse-transmutation)
 ・視物質のアミノ酸置換速度の増大
 ・ピノプシンの視覚への利用?


参考文献

・Taniguchi et al. (1999) Evolution of visual pigments in geckos. FEBS Lett. 445(1), 36-40 (PubMed)
・Taniguchi et al. (2001) Pinopsin expressed in retinal photoreceptors of a diurnal gecko. FEBS Lett. 496(2/3), 69-74. (PubMed)


リンク

視物質
  • 脊椎動物の視物質(概要)
  • メダカの視物質
  • カエルの視物質
  • イモリの視物質

    その他
  • 久富のトップページへ
  • メダカのホームページへ



    このページに関してのご意見・ご質問は、
    Mail:hisatomi'atmark'ess.sci.osaka-u.ac.jp