転写因子

Last updated 2015.2.12


転写因子とは

 転写因子はDNAに結合して遺伝子の活性を調節(DNAからmRNAへの転写量を調節する)するタンパク質で、地球上に存在するすべての生物に共通する根源的な生命活動を担っています。その作用により、個々の細胞で必要な時に遺伝子が活性化され、細胞は分化し、環境に適応することができます。転写因子は、iPS細胞の作成などでも注目されており、細胞生物学的あるいは分子生物学的な視点からよく研究されていますが、生物物理学的な解析は限られています。そこで、各種分光学的な解析、および動的光散乱法や一分子観測などにより、転写因子の挙動や複合体形成反応をリアルタイム観測しています。また、転写因子の活性を光でコントロールしようとしています。


・bZIP型青色光制御転写因子(オーレオクローム)

 オーレオクローム(AUREO1)は、片岡・高橋博士(東北大)らにより発見されたフシナシミドロのbZIP型DNA結合タンパク質で、LOV(Light Oxigen Voltage-sensing)ドメインを持ち、青色光依存的な分枝反応を制御するとされています(Takahashi et al., 2007, Proc. Natl. Acad, Sci. USA, 104, 19625-19630)。我々は、還元的条件下でAUREO1が単量体型として存在し、光照射により二量体化してDNAへの結合性が増すことを示しました。Photozipper(PZ)は、AUREO1のC末側の配列を参考にして作製した分子モジュールで、酸化的環境下でも単量体として存在し、青色光依存的に二量体化してDNAの特異的配列に結合性します(Hisatomi et al., 2014, 289, 17379-17391参照)。

・bHLH型転写因子

 bHLH型の転写因子は、脊椎動物の細胞の分化に深く関与することが知られています。私たちはbHLH型因子の一つである、HEBをコードする遺伝子を単離し、蛍光タンパク質(GFPやBFP)との融合タンパク質(HEB-GFP)を大腸菌中で発現させました。このHEB-GFPと蛍光標識したDNAとの間でFRET(蛍光エネルギー移動)を測定し、DNAとの結合をリアルタイムで解析しています(右図)。



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